
トルコは中央アジアの中心部に位置することで、様々な国から影響を受けた多彩な顔をもつ国。
実は、トルコが「さくらんぼ」の生産量が世界一なのを知っていましたか?
そのトルコの「さくらんぼ」が、山形県の高級品「佐藤錦」のルーツでもあったのです。
今回は、世界一の生産量を誇るトルコの『さくらんぼ』にまつわるストーリーを通して、様々な角度からトルコと日本の知らなかった顔や不思議な関係、「さくらんぼ」の関連情報をお伝えします。
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「さくらんぼ」の名前の由来は“桜の子供”「桜」と「さくらんぼ」の木の違い
日本文化の象徴ともいわれる「桜」。
花見は、訪日外国人旅行者の目的になったり、風習としてアジアや欧米に伝わり、今では「sakura」という言葉も世界共通の名称になっています。
そんな桜の満開の時期から、意外にも「桜」と「さくらんぼ」の違いについての問い合わせが増えるというのです。
桜の実といえば・・・・
そう! 皆さんもご存じ・・・・『さくらんぼ』です。
「さくらんぼ」の名称の由来は、
桜の子供を表す「桜の坊」から変化したものといわれていますが、「さくらんぼ」というのは通称です。
正しくは「桜桃」と言います。
でも、街中でよく見かける桜には、実(さくらんぼ)がつくのを見たことがありません。
なぜでしょう?
それは、鑑賞用の桜と「さくらんぼ」が実る桜とは、種類が違うからです。
日本においての「桜」は、観賞用の品種を指すことが多く「ソメイヨシノ(染井吉野)」が代表種ですが、そのほとんどが実をつけないといいます。
たまに実がなっても、酸味と苦味があり食用には向いていません。
一方、「さくらんぼ」は、同じ「桜」でも食用の品種「セイヨウミザクラ(西洋実桜)」が代表種で、真っ白な花が咲く桜です。
簡単に言うと、観賞用か食用かの違いだけで仲間同士だということです。
では、日本で「さくらんぼ」の生産量1位はどこでしょうか?
そう!「佐藤錦」を生み出した“山形県”です。
その「佐藤錦」のルーツが、トルコだということを知っていましたか?
トルコは世界一のさくらんぼ生産量国
チェリーといえばアメリカのイメージが強いですが、実は世界一の生産量を誇るのはトルコです。
トルコでは、初夏から多くの「さくらんぼ」が出回り、また「さくらんぼ」が最も好まれる国でもあります。
実際に、現地では安く入手できるだけに「さくらんぼ」は、トルコの生活に密着した存在でもあるのです。
トルコ語では、{さくらんぼ}のことを「キラズ」といいます。
トルコのさくらんぼの原産地は、ギレスン。
「さくらんぼ」の生産地のなかでもハディ地区の「さくらんぼ(キラズ)」の多くは、ナポレオン品種。
国外では、品質・味と共に高い生産量が広く知られています。
その9割がヨーロッパ各国に輸出されていましたが、近年になり中国やイラクなど中東諸国にも輸出が行われ、2018年には52ヶ国に輸出されています。
中国ではサクランボが裕福さの指標となっていて、特別な贈り物として用いられたり、新年の贈物として選ばれるほどです。
【世界の「さくらんぼ」主産国出荷量 ベスト3】
1位:トルコ・・・480,748t(全体の21.3%)
2位:アメリカ・・・384,646t(全体の17.05%)
3位:イラン・・・200,000t(全体の8.86%)
(日本は20位で20,000t強の生産量)
世界一の生産量なのにトルコの「さくらんぼ」が日本でお目に掛れないのはなぜ?
現在日本は、海外の「さくらんぼ」を年間4.000~6,000t輸入しています。
その内、98%をアメリカからの輸入で占めています。
アメリカで収穫される「さくらんぼ」は、約1/4~1/3がフレッシュチェリーとして、カナダ・中国・韓国・台湾・日本へ輸出されています。
【日本への「さくらんぼ」の主な輸入国】
1位:アメリカ・・・7,332t(全体の99%)
2位:ニュージーランド・・・30.3t
3位:オーストラリア・・・15t
生産量が世界一にもかかわらず、日本においてトルコ産の「さくらんぼ」を目にしないのは、貿易規制がかかっているため日本に輸入できないからです。
現在、輸入解禁要請が出されているので、近い将来日本の食卓にもトルコの「さくらんぼ」が並ぶ日が来るかもしれません。
日本は品目ごとに輸入許可を出すため、それに准ずる形で進めてきた。2011年1月の日本へのグレープフルーツの輸出後、レモンの許可も発行されました。3つ目の品目としてチェリーを打ち出している。チェリーに関しても既に交渉は最終段階に入っており、間もなく許可が出るだろう。 (輸出業者協会会長セクター理事会ケマルKaçmaz)
トルコは様々な国から影響を受けてきた国
トルコは、黒海・エーゲ海・地中海に三方を囲まれ、日本の約2倍の国土で人口が約8200万(2019年)、地理的にも政治的にも全世界で最も重要な国のひとつといえる国です。
トルコは、アジア、ヨーロッパ、アフリカをひとつに結ぶ点に位置するため、古くから「東西文明の交差点」として、あらゆることの架け橋となることで栄えてきた大国です。
そのため、文化や習慣も様々な国から影響を受けてきました。
また、トルコは東西に延びる国なので、地域によって文化や習慣・都市の持つイメージも全く異なり、そこに住む人々も実に多様性に富んでいます。
一方で、生活水準の数値などでは図りきれない「食料輸出国」の、裕福な生活の一端が感じられる国でもあります。
そう感じるのはトルコが、世界有数の食料自給率の高い農業国だからです。
事実、「さくらんぼ」以外にも、ブドウ・ヘーゼルナッツ・いちじく・あんずの生産量は世界一を誇ります。
その他に、砂糖・小麦・いも類・豆類などの多くの農産物や、海産物などの食材にも恵まれています。
日本では見かけませんが、トルコの「さくらんぼ」はヨーロッパでは、美味しいサクランボとして名が知られています。
日本でよく見かけるのが、トルコのドライフルーツ。
トルコは果物天国なのでドライフルーツの天国でもあるのです。
それには、トルコの風土と立地が大きく関係しています。
トルコの気候は、日本と同じく四季が存在します。
地中海とエーゲ海沿岸地域特有の気候で、太陽がサンサンと照りつけ日照時間も長く、
冬も比較的温暖なので果物や野菜にとって最適な気候なのです。
そのためトルコの食卓のテーブルには、野菜や果物がふんだんに並びます。
このような食材に恵まれたトルコの料理は、世界三大料理の内のひとつともいわれています。
驚くことに、そんなトルコと1万1,000k以上も離れた日本が繋がっていたのです。
驚き!山形県の逸品「佐藤錦」のルーツはトルコのギレスン
山形県の逸品「佐藤錦」のルーツが、トルコだというこというのを知っていましたか?
山形県寒河江市での「さくらんぼ栽培」は、明治9年から始まりました。
1万1,000kを隔てたアジア大陸を旅したトルコの「さくらんぼ」が、山形県で開発に取り組んでから100年かかって、“赤い宝石”ともいわれるほどの美味しい実をつけたのです。
その山形県の「佐藤錦」のルーツが、トルコの「さくらんぼ」の原産地ギレスンなのです。
そして驚くことに、
そのトルコのギレスンと、日本一の山形県のサクランボの生産地寒河江(さがえ)市は、ほぼ同じ緯度に位置しているのだそうです。
日本の「さくらんぼ」は「桜桃(おうとう)」とも呼ばれ、30種類が栽培されています。
(世界では約1300種類)
山形県が日本一で、国内収穫量の70%を占めています。
【都道府県別生産量 ベスト3】
1位:山形県・・・14500t(全体の76%)
2位:北海道・・・1,430t(全体の8%)
3位:山梨県・・・1,190t(全体の6%)
他に、青森県・秋田県・長野県、福島県、新潟県でも生産しています。
(出典:農林水産省ホームページ H26.11.25公表資料より)
山形県の逸品「佐藤錦」は、ナポレオンと黄玉を交配したものといわれています。
日本の風土で改良栽培されたことで、トルコの「さくらんぼ」に比べて色や硬さに違いがあり独自の甘さが加わりました。
一粒ずつ丁寧に栽培された「佐藤錦」は、プリッとした食感と上品な甘みが濃縮された初夏の味わいを感じれる逸品です。(旬の時期:6月~7月)
ちなみに、
山形セレクションの冠のついた「さくらんぼ」は、
・等級・・・「秀」以上、
・階級・・・「L(22mm)」以上、
・甘さ・・・糖度20度」以上
という厳しい基準をクリアした一品だそうです。
ヨーロッパでも愛されているさくらんぼのルーツもトルコ
「さくらんぼ」をローマ帝国に伝えたのは、ルクッルス将軍が「さくらんぼ」をギレスン発見し、ローマに持ち帰ったことが始まりです。
その後、南欧だけではなくイギリスやドイツでも栽培が始まり、生で食べるだけではなく砂糖漬けやリキュールの材料として愛されています。
そして、品種改良された「さくらんぼ」が、イギリス人によってアメリカに持ち込まれ、オレゴン州で栽培されるようになりました。
さくらんぼ世界一のトルコと日本一の山形県は姉妹都市
日本の「さくらんぼ」の生産量は年間約1万5,000t程で、その3/4を山形県が占めています。
日本とトルコは、1万1,000kを隔てたアジア大陸の東と西の端に位置しています。
その両者が「さくらんぼ」で繋がっているのですが、実はトルコと日本の間には友好の起因となった歴史があります。
1889年、エルトゥールル号が和歌山県沖で沈没する事故が起きました。
この時、使節団587人が死亡する大惨事となった一方で、日本人が救出にあたったことで69人の命が救われました。
また、これとは逆に、
イラン・イラク戦争が続いていた1985年、イラクの空爆目前に首都テヘランに取り残されていた日本人約250人が、トルコ航空機によって救出されるという出来事がありました。
この2つの出来事は、今でもトルコと日本の友好の絆として語り継がれています。
現在、経済面での友好関係では、
日本から自動車産業を中心に多くの民間企業が、欧州市場向けの生産拠点としてトルコへ進出しています。
また、アジアとヨーロッパを繋ぐ「ボスポラス海峡横断地下鉄整備計画」が、日本の国際協力で進行しています。
そして「さくらんぼ」の取り持つ縁で、トルコと日本の友好関係の絆が、姉妹都市である山形県寒河江(さがえ)市にあります。
1992年に山形県寒河江市は、トルコ共和国のギレスン市と姉妹都市を結んだ記念に「トルコ館」をオープンさせました。
- 山形県の「佐藤錦」のルーツが、トルコのさくらんぼの原産地ギレスンであること!
- トルコのギレスンと、日本一の山形県のサクランボの生産地寒河江(さがえ)市は、ほぼ同じ緯度に位置していること!
何とも不思議な縁だと思いませんか・・・・・。
そしてまた、新たに姉妹都市の山形県で、トルコの「さくらんぼ」が大きな花を咲かせました!
山形県の挑戦!世界最大級のさくらんぼの開発に成功!!
山形県が世界最大クラスの「大玉サクランボの開発」に成功したのをご存知ですか?
●直径30ミリ前後の500円玉を上回る大きさ
●糖度は20以上
●果肉がしっかりしていて保存性にも優れる
贈答用や輸出用の需要が期待されている新品種です。
まだ名称は決まっていないようですが、2022年から試験販売・23年から本格販売を目指しているそうです。
「さくらんぼ」に関する豆知識
日本の高品質の果物といえば、今、海外の高所得層で大変な人気があります。
また、最近日本にくる外国人観光客は、日本の美味しい果物を求めてファームを訪れる人が増えているといいます。
日本の果物が美味しいと言われるのは、四季が織りなす恵まれた気候風土と豊かな自然、これらを凝縮した旬があるからです。
日本から「さくらんぼ」をお土産として持ち出しできる!
日本の果物は、海外の手土産として喜ばれる一品です。
【日本から「さくらんぼ」をお土産として持ち出しできる渡航先】
- 香港
- シンガポール
- アラブ首長国連邦
- マレーシア
- EU
- ロシア
- インドネシア
- タイ
日本からフルーツなどの植物を海外へお土産にする場合
日本のフルーツをお土産で海外に持ち出す場合は、渡航先の国が定めた植物検疫の条件に見合っているか「植物輸出検査」をする必要があります。
検査を受けるには、「植物等輸出検査申請書」を空港の輸出植物検疫カウンターに提出します。
検査に通り合格証明書が発行されると、渡航先に持って行くことができるようになります。
検査には通常30〜40分かかりますので、早めに空港に行って手続きすることをおすすめします。
ただし、果物は国によって持ち込みの条件が違うため、注意が必要です。
下記から持ち込み先の国・地域を選ぶと野菜・果物の種類別に規制の有無を確認することができます。
↓
「さくらんぼ」の収穫のピークは短く約2週間
「さくらんぼ」は、この2週間のために1年がかりで大切に育てられます。
余談ですが・・・・・・
「♪~サクランボの花咲く季節はあまりに短い~♪」
「さくらんぼ」で有名な曲といえば・・・・・・シャンソン『サクランボの実る頃』
失恋の歌で、恋のはかなさと季節感を感じさせる名曲です。
宮崎駿作品「紅の豚」の主題歌として、加藤登紀子さんが歌っていたのがこの曲でした。
歌にも唄われるように「さくらんぼ」は、季節感のはっきりした果物です。
適期収穫をしないと、美味しくいただけない果物でもあります。
それだけに、「どうしても現地へ行ってさくらんぼが食べたい!」というファンもいるくらいです。
そんな「さくらんぼファン」のために、
山形県では「さくらんぼ」の、旬の時期・果樹園・収穫時期のリアルタイム情報を発信しています。
【さくらんぼを美味しく食べる3つのポイント】
●届いたらすぐに食べること!
●3日以上置かないこと!
●冷蔵庫に入れないこと!
※食べ過ぎには注意しましょう!
サクランボの甘味成分ソルビトールは適量なら便秘解消に働きますが、食べ過ぎると腹痛や下痢を起こす作用があるので要注意です。
まとめ:日本とトルコの見えない縁と絆を繋ぐ「さくらんぼ」
桜の花は、今では日本文化の影響から「Sakura」と呼ばれ、鑑賞用として日本由来の多くの栽培品種が世界各国に寄贈されて各地に根付いています。
英語では桜の花のことを「Cherry blossom」と呼ぶのが一般的ですが、桜の果実は「さくらんぼ」または「Cherry(チェリー)」と呼ばれ、原産地トルコから世界中に広まり食用として愛されています。
「Sakura」の花は日本発、桜の果実はトルコ発。
「さくらんぼ」の不思議な縁で、1万キロ以上も離れた同じ緯度のトルコと山形県が繋がり、日本とトルコの見えない友好の絆のひとつとして、新たな花を咲かせています。
日本は島国特有の文化を持つ国ですが、トルコは多くの国の影響を受けながらも独自の文化を持つ国です。
「さくらんぼのルーツの旅」で、日本とトルコを感じてみるのも新たな発見があるかもしれません。
今回は、もうすぐ旬を迎える『さくらんぼの世界一』のストーリーを通して、様々な角度からトルコと日本の顔や関係性、そして「さくらんぼ」の関連情報をお伝えしてきました。
『世界のナンバー・ワン』というテーマで、ひとつのキーワードにスポットをあてるだけでも、様々な景色や世界が見えてくるのがお分かりだと思います。
見方が変われば・・・・未来が変わる!
情報は人生の質へと繋がる・・・・・!
『世界のナンバー・ワン』シリーズを通して、見える世界が変わる自分を感じて頂ければ幸いです。
では、また次回。