
ベトナムコーヒーとはベトナムで栽培されているコーヒー豆で淹れたコーヒー。
でもブラジルで栽培されているコーヒー豆で淹れたコーヒーのことを「ブラジルコーヒー」ってあまり言わないですよね。
実は私たちが普段飲んでいるコーヒーとベトナムコーヒーは、特徴が全然違います。そしてその印象的な味にはある秘密が隠されていました。
今回はそんなベトナムコーヒーの特徴を興味深く解説していきます。
この記事を読むと実際にベトナムコーヒーを飲んでみたくなると思いいますが、ベトナムコーヒーの入れ方や日本で飲めるベトナムコーヒーのお店も紹介しますのでどうぞ安心してください。
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ベトナムコーヒーの特徴
ベトナムコーヒーの特徴となっているのは、次の4つです。
- コーヒー豆の品種
- コーヒーの焙煎方法
- 専用のフィルター
- 練乳を入れる
これらの特徴が生まれたのはベトナムならではの理由がありますが、そのおかげで美味しいベトナムコーヒーが飲めるようになりました。
それぞれの特徴とその理由を詳しく解説していきます。
日本では珍しくも馴染みのある品種
日本で販売されているコーヒー豆のほとんどはアラビカ種ですが、ベトナムコーヒーのほとんどは、ロブスタ種(正式にはカネフォラ種)というコーヒー豆を使っています。
ベトナムは低地平原が多いのでアラビカ種のコーヒーの木を育てられるところが少なく、結果ロブスタ種がメインとなっています。
アラビカ種とロブスタ種には次のように大きな違いがあります。
特徴 | アラビカ種 | ロブスタ種 |
苦味 | 爽やかな苦味(産地による) | 独特の苦味 |
酸味 | 爽やかな酸味(産地による) | ほとんどない |
香り | 香り高い(産地による) | ほとんどない |
コク | 濃厚(産地による) | ほとんどない |
カフェイン | 普通 | アラビカ種の約2倍 |
栽培のしやすさ | 病気に弱く低地平原で栽培が難しい | 病気に強くどこでも栽培できる |
値段 | 高価 | 安価 |
シェア率 | 世界の70〜80% | 世界の20〜30% |
ベトナムにもアラビカ種はありますが、値段はロブスタ種の倍ほどする高価なコーヒーです。
ベトナムは世界第2のコーヒー豆輸出国
これを聞くと驚かれるかもしれませんが、実はベトナムはコーヒー豆を世界に輸出している量がブラジルに次ぐ世界第2位となっています。
お気づきの通り世界の20〜30%しかないロブスタ種のベトナムコーヒーが世界第2位ということは、世界で輸出されているロブスタ種のほとんどがベトナムコーヒー ということになります。
世界は「アラビカ種のコーヒ」ーと「ベトナムコーヒー」ということになりますね。
ちなみに日本ではロブスタ種(つまりベトナムのコーヒー豆)は缶コーヒーやインスタントコーヒーに使われることがほとんどです。
ロブスタ種100%だと独特の苦味で飲みづらいですが、たいていアラビカ種と上手にブレンドしていています。
焙煎の仕方が独特
8種類あるコーヒーの焙煎方法の中で日本では中煎りローストの3つが主流です。最近ではサードウェーブの影響から浅煎りローストを飲む人も増え始めています。
しかしベトナムコーヒーは日本ではエスプレッソやカフェラテ、あるいはアイスコーヒー用の焙煎方法である深煎りローストの3つが主流なので、ベトナムのコーヒー豆の色は真っ黒です。
これはベトナムの水がヨーロッパと同じ硬水なので、浅煎り焙煎や中煎り焙煎では抽出するときに雑味が目立ってしまうからです。
それでヨーロッパと同様にちょっとおしゃれなカフェではエスプレッソマシーンが置いてあるところがほどんどで、ベトナムで普通のコーヒーが飲みたい場合は「ドリップコーヒー」ではなく「エスプレッソをお湯で薄めたアメリカン」となります。
さらに焙煎をするときにはロブスタ種独特の苦味を隠すためバター(時にはベトナムのナンプラーを使うことも)を使いますので、ベトナムコーヒーはブラックで飲んでもほんのりと甘味があるのが特徴です。
時々ベトナムコーヒー(すなわちロブスタ種)のコーヒー豆は甘味がある、と勘違いしている人がいますがこれはバターの甘味です。
牛乳の代わりに練乳を入れる
ベトナムコーヒーは牛乳の代わりに練乳をたっぷり入れて飲むのが特徴ですが、これには次のような興味深いエピソードがあります。
ベトナムコーヒーはフランスの植民地時代に、カフェオレのあるフランスの影響によって広まりました。
しかし当時のベトナムはまだ冷蔵庫が普及しておらず牛乳を保存できる場所がありませんでしたので、常温保存できる練乳を牛乳の代わりにコーヒーに入れるようになりました。
また練乳は焙煎に使うバターとも相性が良く、ロブスタ種の独特の苦味を上手に引き立てる働きがあります。
このように練乳とベトナムコーヒーはとてもあうので、牛乳が普及した今でもベトナムコーヒーには好んで練乳が使われています。
引用元:生活の裏ワザ.com「ベトナムコーヒーになぜ練乳?美味しく飲める量や淹れ方も解説!」より
このように植民地時代にフランスの影響によりコーヒー栽培を始めたベトナムは、独特の苦味を紛らわす苦肉の策としてバターで焙煎し練乳を入れるようになりました。
しかし結果的に新しいコーヒーの味を確立するようになりました。
ちなみにベトナムは牛肉を食べる習慣はありませんでしたが、植民地時代に牛ステーキを食べるフランス人により牛が食用として使われるようになり、余った切れ端を使って誕生したのがフォーです。(日本では取りにくいフォーのほうが有名ですが、牛肉入りフォーが本来のフォーの食べ方です。)
植民地時代の辛い時代がフォーやフランスパンを使ったバインミー、そしてベトナムコーヒーのような食文化につながったというのは少し考えさせられます。
専用のフィルターを使う
ベトナムは「カフェ・フィン」という専用のフィルターを使います。
「ドリッパー」にコーヒーの粉を入れ、「中ぶた」をしめ、「上ぶた」を使って蒸らします。
ドリッパーの下には小さな穴がたくさん開いていて、この下にカップを置いてゆっくりと抽出します。
コーヒーが抽出されるまでに5分以上かかりますので、その間ゆっくりとコーヒーの成分を抽出し濃いコーヒーができます。
このエスプレッソのように濃いコーヒーに、氷と練乳をたっぷり入れて飲むのがベトナムコーヒーです。
ベトナムコーヒーの美味しい入れ方
お土産にベトナムコーヒーをもらったけど入れ方がわからないという人がよくいますが、とても簡単ですのでどうぞ試してみてください。
【ベトナムコーヒーの入れ方】
- グラスに練乳20gと氷をたっぷり入れる
- フィルターの中ぶたを開けて、その中にコーヒーの粉20gを入れる
- フィルターを氷の入ったグラスの上にのせ、中ぶたの上にお湯を20ccほど注ぎ、60秒蒸らす
- 続いて100ccのお湯を注いで上ぶたをし、コーヒーの液がグラスに落ちるまでゆっくり待つ
コツは「濃いコーヒーをゆっくり抽出する」というものなので、材料や入れ方はしっかりと守ってください。
カフェ・フィンでホットコーヒーももちろんできますが、抽出時間が長すぎてぬるくなってしまいます。
現地ではカップの下にお湯を張って温度が覚めないように工夫しています。
お土産で買う時はカフェ・フィンも忘れずに買おう
お土産としても人気のあるベトナムコーヒーですが、カフェ・フィンを買うのを忘れないようにしましょう。
自宅にあるペーパードリップやコーヒーメーカーでもベトナムコーヒーを入れることはできますが、ペーパーを通すとベトナムコーヒーのバターやオイルまでこしてしまうので、あのとろっとした濃さや香りが失われてしまいます。
代用品としておすすめなのはコーヒーオイルを通すことができるフレンチプレスや金属フィルターです。
ただカフェ・フィンは100円〜400円程度で買えますし、スーパーなどではコーヒー豆を買うとおまけについてくるものもありますので、ベトナムに行ったら買っておきましょう。
ベトナムコーヒーの豆やカフェ・フィンは次のような場所で買えます。
- 観光地にあるコーヒー豆専門店
- ハイランドコーヒー、チュングエンレジェンドのような全国チェーンのカフェ
- ビンマート、ロッテマート、イオンのような大型スーパーやコンビニ
つまりどこにでもあるのですが値段はピンキリで、味は値段相応です。
ハイランドコーヒーやチュングエンレジェンドで売っているコーヒー豆はお土産としても見栄えがよく有名で味も美味しいのでおすすめです。
日本で飲めるベトナムコーヒー
日本では最近ベトナム人が経営しているベトナム料理の店が増えてきました。東京都では日本人が経営している場所にもベトナムコーヒーが置いてある場所があります。
でももうちょっと気軽にベトナムコーヒーを飲みたい、という人にお勧めしたいのはご存知「サンマルクカフェ」です。
サンマルク全店にはベトナム珈琲とアイスベトナム珈琲が置いてあります。
これらは本場のベトナムコーヒーとは少し違いエスプレッソやアイスコーヒーに練乳を入れるというスタイルですが、本場のベトナムコーヒーと味がよく似ていますのでおすすめです。
まとめ ベトナムコーヒーは美味しい
今回はベトナムコーヒーについて解説しましたが、いかがだったでしょうか。
- ベトナムコーヒーは独特の苦味のあるロブスタ種という品種のコーヒー
- 独特の苦味をごまかすためにバターなどを使って深煎り焙煎している
- さらに牛乳の代わりにコンデンスミルクを使う
- これらにより嫌な苦味が調整され甘くて美味しいベトナムコーヒーになる
ベトナムコーヒーは一度飲むと印象的で味がずっと残ります。ベトナム旅行に行ったことがある方なら日本でベトナムコーヒーを飲めば、あのベトナムの暑さと騒音を思い出すかもしれません。
もしベトナムコーヒーを飲んだことがない、あるいは思い出せないならどうぞサンマルクカフェの「ベトナム珈琲」を飲んでみてください。