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シンガポールのクレジットカード事情
- 1.1 シンガポールの金融
シンガポールは、金融では、世界でも中心的な役割を果たしている国の一つです。世界的にもトップレベルの銀行システムが整備されており、インターネットバンキング、テレフォンバンキング、クレジットカードの決済システム等も整っています。世界からの批判もあるようです。シンガポールの中央銀行であるMASは、金利操作ではなくSGD外国為替市場への介入により、金融政策を行っており、その点は特徴的です。通貨はシンガポールドルを使用されています。
- 1.2 シンガポールの銀行
シンガポールにおいても、一時期シンガポール国内の銀行の国際的な競争力を高めるため、銀行の統廃合がすすみました。現在、3つの系列(DBS,UOB,OCBC)に分かれる、5つの主要な銀行(full bank)があります。
Full BankとはBanking Actにより包括的な銀行業務を行うことをシンガポール当局により承認された銀行をさし、国内Full Bankは、次の5行しかありません。
シンガポールからの各銀行HPへのアクセス数は、アクセス数を解析するウェブサービスの情報によると、DBS、OCBC、UOB、 Citybankの順となっています。
【国内Full Bank】 (総資産額順)
(注) Full Bank とは Banking Act に基づきシンガポール国内で包括的な銀行業務を行うことをシンガポール当局により承認された銀行をさします。
DBS Bank Limited
Oversea-Chinese Banking Corporation Limited (OCBC)
- Bank of Singapore (subsidiary of OCBC)
United Overseas Bank Limited (UOB)
- Far Eastern Bank Limited (subsidiary of UOB)
【主な海外Full banks】
American Express
Citibank
HSBC
【主な海外Qualifying full banks】
Standard Chartered Bank
Maybank
(資料) https://masnetsvc.mas.gov.sg/FID.html
- 1.3 シンガポールはクレジットカード社会
- 1.3.1 シンガポールでのクレジットカードの普及の状況
シンガポールはカード社会といってもいいほど、シンガポールではカードが普及しています。デビットカードも普及しておりカード発行数うちの53%はデビットカードが占めています。
インターネットの普及率の高いシンガポールでは、クレジットカードやネットバンキングなども普及しています。オンラインショッピング利用者のうち50%のユーザーが、オンラインショッピングの決済をネット上で完結するなど電子マネー決済が普及しています。
シンガポールで取引されるEコマースの決済手段で最も多いのは、クレジットカードで全体の8割を占めています。ついで、ペイパル、代金引換が決済手段として使われています。
クレジットカード保有率をみると、シンガポールは、アジア太平洋地域の国の中でも2番めに高い保有率をもち、専門機関による調査によると、その発行枚数は合計800万枚以上となっており、一人あたりのクレジットカード保有数は平均3.3枚という統計もあます。さらに近年では一人あたりの保有枚数は3.8枚にまで増加しており、現在も増加傾向の中にあります。日本と比較しても、日本の一人あたり保有枚数の3.3枚を上回っています。こうした背景の中、シンガポール中央銀行MASは、カード保有者保護等を目的としクレジットカード発行に関する規制を強化しています。
- 1.3.2 店舗などでの利用
このように、シンガポールでは、クレジットカードの普及が広がっているため、店舗でのクレジットカードの利用に関しては、ほとんど心配することはありません。
零細個人企業などの小規模店舗やホーカー(屋台)などを除けば、オンラインショッピング以外でも、だいたいクレジットカードで支払いをすませることができます。レストランは勿論、タクシー、スーパー、病院どこでもクレジットカートは使えます。また一部光熱費や公共料金の支払いもクレジットカードでの支払いが可能となっています。
シンガポールでは、クレジットカードを利用するのは日常的な行為となっており、さらに、少額決済に関しても寛容で遠慮することなくクレジットカードを使えると思ってよいでしょう。
しかし、タクシーの場合は、クレジットカードで乗車できるものとできないものとがあるため乗車前に注意しましょう。
日本では、基本的にカード決済でも現金決済でも、カード利用者への請求額は同額ですが、シンガポールでクレジットカードを利用する場合は、10パーセントの手数料が別途必要となるため、タクシーを利用する際は、やはり現金で清算するのが一番いいでしょう。
なお主要なタクシーではマスターカード、アメリカン・エクスプレス、ダイナース、JCBは使えるものの、Visaは使えないことが多いようです。これは、以前シンガポールのタクシー会社とVISAの間で、手数料の交渉の際トラブルがあったためといわれています。
また、MRT(地下鉄)や市内バスなどの公共交通機関では直接カードは使用できません。
クレジットカードを使って、公衆電話から国際電話をかけることも可能です。
クレジットカードで決済をするときは、日本のようにすべて店員がやってくれるところはすくなく、自分のカードをPOS端末に通さなければなりません。もし、店員がカードを預かって店の奥に消えてしまったら注意してください。なにか、不正行為を行っているかもしれません。
シンガポールのクレジットカード利用の傾向
- 2.1 シンガポールにおけるクレジットカードのひと月あたりの利用額
クレジットカードの契約内容をよく知っていると答えた人の月額購入金額はS$1068で、
一方そうでないと答えた人はS$837であるという調査があり
契約内容をよく知っていると思っている人のほうがよくカードを利用する傾向にあります。
- 2.2 シンガポールの人気のクレジットカード特典
シンガポールでは、キャッシュバック、ポイント交換等による商品券などが人気のある特典となっています。
- 2.3 返済等の手段
シンガポールで最もよく利用されている決済方法は、ATM/kiosk/銀行端末で利用者の28%が使用しています。
- 2.4 年会費
シンガポールでは、利用者のうち7割は、年会費の支払いは行っていないという調査結果が有り、
6割はwaiver利用等によるものです。
(注)waiverとは年会費を無料にしてくれとカード発行会社に申し入れること。
- 2.5 ウェイヴァー制度 (クレジットカード年会費無料)
waiveとは放棄するという意味。つまり、銀行が年会費を放棄するということです。waiveするのは銀行ですので、waiveしてくれと頼むことになります。
年会費を waive したいとクレジットカード会社に電話などして申し出て、承認されると年会費が無料になります。できないと言われたら、解約するといえば、承諾してくれることもあるといわれています。電話の自動応答システムやネットでも申請が可能な場合があります。自動応答システムで承認されなかった場合でも、オペレーターに直接問い合わせるとwaiveできることがあります。
銀行がどのようなときに waive するのかは銀行側からは明白に公表されていません。waive する場合は、ケースバイケースで、利用額、支払い状況、カードの保有数により銀行側が判断するとされています。
すんなり waive してもらえるのは、以下の条件を満たす場合のようです。
① 普段から使っているクレジットカードであること。
② 一定額以上使っていること。(基準は各社異なり、公表はされていないが、年間S$500使っているかどうかが目安であるといわれている。)
③ 支払いに遅延等がないこと。
シンガポールのクレジットカード基礎知識
- 3.1 クレジットカードのキャッシュバックとポイント特典
- 3.1.1 キャッシュバック(Cashback Rebates)
キャッシュバック特典とは、クレジットカードを利用すると、利用額に応じた金額が一定期間ごとに口座に振り込まれまれるサービスを指します。
シンガポールのキャッシュバック還元率は1%から3%が主流となっています。カードによっては、利用カテゴリごとに異なる還元率が設定されていることもあり、上限額が定められていることもありその形式は様々です。
キャッシュバックは、ポイントのように、有効期限がなく、交換の必要もないためクレジットカードの利用特典としてより好まれる傾向があるようです。
- 3.1.2 ポイント(Rewards Points)
ポイント特典とは、クレジットカードを利用すると、利用額に応じポイントが加算され、商品券、マイル等と交換できるサービスを指します。ポイントには、有効期限が設定されている場合と設定されていない場合が有ります。
- 3.2 利息手数料
クレジットカード発行会社はそれぞれ実効金利(EIR; Effective Interest Rate)を設定しています.これに基づき毎月のinterest chargeが計算されます。
【計算式】 未払残高 x EIR ÷ 365
EIRは銀行によって異なる値が設定されており、シンガポールでは、25%〜28%に設定されていることが多いようです。
一般的に購入日から決済日までの期間(grace period/free interest period)は利息は発生しません。したがって、決済日に全額支払いできなかった場合に、当該未払残高に対し翌月に利息が発生します。この期間は銀行によって異なる期間が設定されており、50日などの場合もあるため各発行会社に問い合わせるか、ホームページを参照してください。キャッシングを行った場合には、この利息無料期間の制度はないことに留意して下さい。
- 3.3 クレジットカードの利用限度額 (credit limit)
発行会社が設定可能なクレジットカードの利用限度額はシンガポールの中央銀行にあたるMASにより一定の規制がされています。
上限額は以下のとおりです。
年収がS$30,000未満の場合 月収の二倍
上記以外 月収の四倍
この枠内で、審査により発行会社が利用可能限度枠を提示し、利用者が最終的な利用可能限度枠を設定します。
- 3.4 外貨取扱手数料 (Foreign Transaction Fee)
シンガポールのクレジットカードを使用し、シンガポール国外で取引を行った場合には、外貨取扱手数料が発生します。
手数料は、購入金額の1.5%前後となっています。
(例) 日本でショッピングをした又は日本のサイトでオンラインショッピングをした場合等
- 3.5 シンガポールにおけるクレジットカードの作成の流れ
クレジットカード作成の流れは一般的に次のようになります。
クレジットカード会社によって異なるため、詳細は各社ホームページで確認してください。
シンガポールのカードは審査基準が日本に比べて厳しく、一般カードで、シンガポール国民・永住権者の場合には年収3万ドル以上、外国人は6万ドル以上が一般的な発行条件になっています。また、カードによっては、一定の保証金を預け入れれば、年収制限を下回っていても発行できる場合が有ります。
クレジットカード作成の具体的な流れは、各発行会社の申し込みページ等の入力フォームに住所・氏名・職業に関する事項を記入し、身分証明書(NRIC、パスポート、雇用許可書等)、数カ月分の給与明細書、納税通知書等のコピーを添付して申込みます。
クレジットカード発行会社の審査を通ると、利用限度額がクレジットカード発行会社から提示され、カードが送付される手続きになっています。
シンガポールのクレジットカードで人気の国際ブランドや発行会社の比較とおすすめ
- 4.1 シンガポールで利用可能なクレジットカードブランド
シンガポール国内でのEコマースの決済手段を対象に集計した調査によると、使用された国際ブランドは、VISAが65%となり、ついで順番に、MasterCard、Americn Expressとなっており、VISAが一番利用されています。したがって、各店舗で使えるブランド・使えないブランドはどれなのかといえば、このランキングと同じような状況にあるとおもってよいでしょう。
やはり、国際ブランドの中では、VISAとMasterCardは強く、JCBもいくらか使えるところがありますが、限定的であるため持っいてもシンガポールではあまり活用できないようです。シンガポールへ旅行する際には、クレジットカードはVISAとMasterCard、もしくはデビットとして銀聯カードを持っていたほうがよいです。
【VISAカード】
文句なしにどこでも利用可能。シンガポールに来るのであれば1枚くらいはVISAカードを持っていくことをおすすめします。
【MasterCard】
VISAと同様に、MasterCardもかなりの店舗で利用可能。不便さを感じることもないでしょう。
【アメリカン・エキスプレス】
結構使えるといったところです。ただVISAカードやMasterCardしか受け付けない店舗もすくなくないため、アメリカン・エキスプレスのみでは心配な点もあるでしょう。
【JCBカード】
日本人がよく行くような観光地にはJCBカード加盟店があることがおおいです。ホテルなどでの利用も受け付けてくれますが、それ以外は不便さを感じることがあるでしょう。シンガポールにも、JCB直営会員ラウンジ「JCBプラザ ラウンジ」が設置されています。
【ダイナースクラブ】
JCBカード同様、使える場所にやや困るでしょう。高級レストランやホテルなどでは使えることもおおいようです。
【中国銀聯カード(union pay)】
シンガポールは中華系の移民や旅行者が多い国でもあるため、銀聯カードの利用場所は急増しています。
- 4.2 クレジットカード発行会社ランキング (issuer)
- 4.2.1 シンガポールで発行枚数が多い発行会社
シンガポールにおけるEコマース決済手段を対象に集計した調査によると、使用されたクレジットカードは、発行会社別では、UOBが二割を占め、ついで、順に、DBS、Citibank、OCBC、HSBC、Standard Charteredとなっており、この6社が全体の8割を占めています。やはり、シンガポールの国内銀行が人気があるようです。
- 4.2.2 発行会社の満足度調査ランキング
J.D. Power社がシンガポールのクレジットカード利用者を対象にした満足度調査によると、高い評価を受けている発行会社は、American Expressという結果になっています。ついで、DBSのブランドであるPOSB、OCBC、Citibankが高い満足度を得ています。
http://www.straitstimes.com/business/banking/which-singapore-credit-card-issuer-has-the-most-satisfied-customers-this-survey
J.D. Power 2015 Singapore Credit Card Satisfaction Study
(数値はアンケートの結果を数値化したもの。)
1 American Express 737
2 POSB(DBS系列) 710
3 OCBC 704
4 Citibank 697
(平均) 697
5 DBS 696
6 HSBC 695
7 Standard Chartered 690
8 Maybank 689
9 UOB 687
- 4.2.3 特典タイプ別トップ3
- 4.2.3.1 キャッシュバック
- American Express True Cashback Card
クレジットカード利用の全てに、1.5%のキャッシュバック特典。
キャッシュバック限度額もありません。
- ANZ Optimum World MasterCard Credit Card
外食&レジャー、トラベル、ショッピング、グローサリーのうちから一つを選んで、セレクトしたカテゴリーで5%のキャシュバックサービス。
- Citi Cash Back Card
スーパー、外食カテゴリーの利用で8%のキャッシュバック。
- 4.2.3.2 ショッピング
- Citibank Rewards Card
衣料品、バッグなどをデパートやオンラインショップで買うと、S$1ごとに10ポイントまたは4マイルがたまる。
- ANZ Switch Platinum Card
ショッピングカテゴリの商品購入時に20ポイントたまる。
- UOB Preferred Platinum Visa Card
S$5利用ごとに10ポイントが貯まる。
- 4.2.3.3 ガソリン
- Citi Cash Back Card
最大で、Esso利用時 20.88%、Shell利用時 20.8%。
その他のガソリンスタンド利用時でも8%のキャッシュバック特典。
- HSBC Visa Platinum Credit Card
ShellとCaltex利用時に、最大16%の割引特典。
- POSB Everyday Card
SPC利用時最大20.1%の割引特典。
- 4.2.3.4 スーパー
- Citi Cash Back Card
スーパーマーケットでご購入の際最大8%キャッすバック特典。
- ANZ Optimum World MasterCard Credit Card
外食&レジャー、トラベル、ショッピング、グローサリーのうちから一つを選んで、セレクトしたカテゴリーで5%のキャシュバックサービス。
- Citibank SMRT Platinum Visa Card
スーパーマーケット利用時最大7%割引で、ポイント特典もあります。
- 4.2.3.5 マイル
- American Express Singapore Airlines KrisFlyer Credit Card
S$1 利用ごとに1.1マイルが貯まる。
さらに、クレジットカード初回利用時に5、000マイル、カード受け取り後6ヶ月以内にS$700利用で3,000マイルのボーナス。
- ANZ Travel Visa Signature Credit Card
休日、Qantas と Jetstar airlines で航空券予約時に2.8マイル。
S$1利用ごとに1.4マイル。
カード更新時に10,000マイル。
- DBS Altitude Visa Signature Card
オンラインで航空券予約時にS$1ごとに3マイル。
シンガポール国内で利用時に、S$1ごとに1.2マイル。
国外で利用時に、S$1ごとに2マイル。
- 4.2.3.6 学生
- Citibank Clear Card
指定された大学の学生のみが申込可能で年収制限がありません。
対象校: NTU, NUS, SMU, SIM, SUTD, SIT, University of Chicago Booth School of Business, DigiPen, ESSEC, GIST-TUM Asia, INSEAD, S P Jain, Tisch, UNLV, Nanyang Polytechnic, Ngee Ann Polytechnic, Republic Polytechnic, Singapore Polytechnic, Temasek Polytechnic, LASALLE-SIA and NAFA
- Standard Chartered Manhattan $500 Card
大学生の場合には年収制限がないカード。
シンガポール人及び永住権者のみ申込可能。
- DBS Live Fresh Student Card
指定された大学の学生のみが申込可能で年収制限がありません。
シンガポール人及び永住権者のみ申込可能。
対象校: NUS, NTU, SMU, SUTD, SIM, SIT, Nanyang Polytechnic, Ngee Ann Polytechnic, Temasek Polytechnic, Singapore Polytechnic and Republic Polytechnic
そして下記ではクレジットカードととても関係の深い、シンガポールの銀行事情についてお伝えしております。