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タイの観光業を支える「エレファント・ツーリズム」

 

タイを代表する動物といえば「象」。

タイ語では象を「チャーン」と言います。

象は「勇気と誇りの象徴」であり、タイの人々の暮らしにも密着してきた大切な存在です。

タイには「エレファント・キャンプ」と呼ばれる観光スポットが複数あり、サステイナブルツーリズムのひとつとして人気が高まっています。

今回は、観光産業に従事する象を大切にする持続可能なツーリズムを紹介します。

 

タイの『エレファント・ケア・ツーリズム』は“サステイナブルツーリズム

“サステイナブルツーリズム は「持続可能な観光」

地域の「自然」「文化」「伝統」「そこに暮らす人々」を活かして、

「自然環境」や「文化・伝統」を守りながら外からの旅行者を受け入れ、地域経済を発展させるツーリズムのこと。

(参考:国連世界観光機関UNWTO駐日事務所ホームページ

 

そのひとつに『エレファント・ケア・ツーリズム』があります。

100年前、一般庶民の間では10万頭もの象が飼われていました。

森林伐採のために林業で、材木を運ぶために訓練されてきたのです。

象使いは、昔から代々受け継がれてきたものです。

家の傍には象がいて、産まれた時から象と一緒なのが普通の暮らしでした。 

 

タイの人々の暮らしに密着してきた象ですが、昔は王様の乗り物。

戦争起こると象は王を守り、兵士と共に戦い国を守ってきました。

王室では戦闘用として何頭も飼育されていたとか。

先頭を切って戦いに挑む「勇気と誇りの象徴」とされていたのです。

16世紀後半のビルマ軍によるアユタヤ侵攻の際、ビルマ王子との一騎打ちでナレースワン大王は歴史的勝利をおさめました。

その時の象に乗る大王の姿が、タイの50バーツ紙幣に描かれています。

 

白い象は高い人徳を持つ王の象徴

1855年~1916年のタイ国旗は、赤い地に白い象が描かれたものでした。

白像のデザインは現在、海軍旗のデザインの中に残っています。

タイでは白い象を得た国王は、高い人徳を持ち人々から敬われると信じられています。

白い象は王の象徴でもありました。

 

タイでは白い象を得た国王は、高い人徳を持ち人々から敬われると信じられているのです。

タイには通称「象法」といわれる象の法律があります。

白い象を発見したら、王に献上しなければならない!という法律まであるのには驚かされます。

また、多くの国民が仏教を信仰しているタイには、誰もが知る逸話があります。

「ブッダのお母さんはある日、白いがお腹に入る夢を見てブッダを身ごもったことを知った」

白い象はブッダの化身とされ、ブッダの前世は白い象という説もあるとか。

 

観光客に人気のエレファントライディング

飼育象は、全国22の県にある250カ所のエレファント・キャンプで暮らしています。

エレファントキャンプとは、象を訓練してショーを見せたり、象乗り体験や山歩きを行う施設です。

エレファントライディングには観光地により様々なタイプがあります。

世界遺産の寺院の周りを象に乗って歩いたり、海岸のそばや森の中やジャングルを通り川の中を歩くというコースもあります。

象のアトラクションでの収益は、膨大な費用がかかる象のエサや飼育費用の一部に充てられます。

(大人の象1頭は1日に150kgの 食料・100リットルもの水が必要)

 

1989年以降、森林伐採が禁止になり象の仕事がなくなりました。

飼育していた象は自然の生息地に戻すことが難しく、訓練技術を活かして観光客相手にアトラクションをする観光産業で活路を見出したのです。

なかでも象に乗れるアトラクションのエレファントライディング」は、観光客に大人気で各地の観光地に 広がりました。

 

タイのオススメ象スポットは

 

象乗りは、場所や体験メニューによって価格は異なります。

タイの人気観光スポット周辺は、象乗りの体験料金が高い傾向。

象のトレーナーの指示はしっかり守り、むやみやたらに象を刺激することはやめましょう。

観光地で生活をしている象や象使いの家族の多くは、スリン県出身です。

 

タイの象と象使いが暮らすスリンの

タイ東北部のスリン県タクラーン村は「ゾウの村」と呼ば れ、ゾウ使いが暮らす村です。

かつては、野生で捕獲したゾウを飼い慣らし、木材の運搬に使っていました。

昔から、この地域はゾウ取引の中心地。

タークラン村では、常に300頭前後のゾウが飼われています。

人間と像が寄り添って暮らしている様子が見られると、多くの観光客が押し寄せるようになったのだそう。

 

世界最大級の象イベント「スリンの象祭り」

象のイベントの中でも特におすすめなのが、毎年11月に開催されるスリンの象祭り。

そのスリン県に、約200頭以上の象が集結して行われる世界最大級の象イベントです。

  • 象と人との綱引き
  • 象の徒競走
  • サッカー
  • パレード

など、象と人が一緒に楽しめる大運動会。

 

残念ながら2020年は新型コロナウイルスの影響で中止となりました。

2021年は約1ヶ月遅れで、

初めてオンラインツアーで世界最大級の象祭りが開催されました。

2021年12月26日 11:00-12:00(日本時間)

オンラインツアー実施会社:JTBタイランド

協力:スリン県観光推進協会の協力

※売上の一部は、スリン県観光推進協会を通じて、象の支援に役立てられます。

 

タイの非営利団体セーブ・エレファント基金

タイの飼育象のうち半分以上を供給しているのが、スリン県にある村の周辺地域です。

タイ政府も観光業を盛り上げるために、象の訓練を奨励するようになりました。

セーブ・エレファント基金は、スリン県と協力して作られたスリン・プロジェクトです。

(補助金を受けるには証明が必用:芸を3つ覚える・地元のショーに出演している・観光客を乗せている)

タークラン村でも多くのゾウ使いがこのプログラムに参加し、ゾウの暮らしを改善しながら政府からの支援金を受け取っています。

それでも象を飼育するには多大な資金がかかるため、多くの像使いたちは補助金を受けても苦しい生活をしているのが現状です。

 

タイは世界で唯一”象専門病院”を設立した国

タイ政府は、象の保護にも力を入れています。

1990年、象の減少や虐待が問題になり、チェンマイにエレファント・ネイチャーパークを設立。

この施設には、タイならではの象専門病院があります。

象を保護するだけでなく、象のショーを見学するエリアや象使いを育成するトレーニングセンターなどもあり、訪問者が象の支援に直接役立てる仕組みを作っています。

 

この他にもタイには高齢や病気でリタイヤした象が、ストレスなく余生を過ごすためのサポートをする施設が各地にあります。

最近ではトレッキングなどに代わって、象と自然な形で触れ合える場所としてのエレファントケアも人気を高めています。

エレファントケアでは、象には乗らず一緒にジャングルを散歩したり、食事の世話をしたり、象が大好きな水浴びを一緒に楽しむプログラム。

リラックスした象と一緒に、自然の中でゆったりとした時間を過ごしながら象の生態や生活にや、象をめぐる環境保全の大切さについて学ぶ学習型体験ができます。

観光を通じて、環境保全への理解を深める「エコツーリズム」としても知られるようになってきたようです。

 

では最後に、タイで唯一象と宿泊できる施設を紹介します。

 

タイでしか体験できない!象と宿泊できる「Chai Lai Orchid」

「Chai Lai Orchid」はタイ北部の県チェンマイから、さらに奥に入った山の中にあります。

日本人には、まだ馴染みが無い施設かもしれません。

もともと「Chai Lai Orchid」は、少数民族の女性たちの支援のために始まった活動でした。

現在では、動物の保護活動も行うようになったAirbnbビジネス。

Airbnbのゲストはアメリカを筆頭に、中国や韓国など世界各国からやって来ます。

airbnbとは

airbnbは旅行先の家を提供する「ホスト」と部屋を借りる「旅行客」のあいだを仲介するサービス。
ホスト側は部屋情報をairbnbに掲載して、旅行客はairbnbで借りたい部屋の情報を検索して予約ができる。
料金の支払いに関する決済はすべてairbnbが代行してくれます。

「Chai Lai Orchid」には、2つの特徴があります。

ひとつ目は、象と触れあうことができて、象が歩いて部屋まで遊びにきてくれるのです。

象が朝食を運んできてくれるサービスも受けれるからビックリ!

その他にも

  • 目の前を流れる川でのボートツアー
  • 山奥でのトレッキング
  • 滝での水遊び

など、ゲストが思い思いに時間を過ごして楽しめる環境があります。

 

実は、ここにいるのはすべて保護された象。

タイでは観光客向けのショーなどで集められたゾウが、劣悪な環境で飼育されるケースもあるといいます。

この施設では、そうしたゾウを虐待行為から救出し、餌を与え保護してきました。

現在、保護している17頭のゾウを自然に近い形で飼育しています。

 

もうひとつの特徴は、従業員の多くは少数民族カレン族の女性だということ。

タイとミャンマーにまたがる山岳地帯の村に暮らすカレン族。

電気や水道もなく全く収入がない貧しい家が多い村の女性は、教育の機会をもてず人身売買の被害にあうケースもあるといいます。

施設では、こうした少数民族の女性を雇って自立の手助けをしていています。

 

この施設で像とできることは、

  • 象を間近にみる
  • 象への餌やり(オプション)
  • 象との散歩・川での水浴び(オプション)
  • お部屋での餌やり・一緒に撮影(オプション)
  • 朝食を部屋に運んでもらうサービス(オプション)

ゲストは象とその家、森を保存する方法を学ぶことができます。

※オプションを申し込んでいないと象との素敵な画像は撮影出来ない!

 

収益の100%は、危険にさらされている女性と少女を支援する反人身売買組織であるDaughters Risingを通じてコミュニティに寄付されます。

Airbnbビジネスや動物福祉、チェンマイに興味のある人なら、ぜひ訪れてみてほしい場所です。

 

▶Chai Lai Orchid

「Chai Lai Orchid」では、ボランティアも募集しています。

象は人の言葉を理解する!タイの像に・・・あ・い・た・い

お互いを信じるタイの象と人間の関係は奥深い。

タイ人にとっては家の戸を開ければ象が目の前にいて、産まれた時から象と一緒に時を過ごしてきたのがごく普通の暮らしです。

でも、森林伐採や開墾による生息地の減少や、いまだに続く象牙を目的とした密猟などにより、現在タイの象は絶滅の危機に瀕しています。

さらに新型コロナウイルスの感染拡大によって、タイの観光業も大きな打撃を受けました。

現在、コロナ禍で失業した200頭を超える象がスリン県に帰ってきているようです。

象とともに歩んできたタイの長い歴史に幕を下ろさないためにも、

世界を自由に行き来できる日が来た時には、ぜひ象との触れ合いの旅に行ってみよう。

旅の醍醐味は、知らない人・知らない世界に出会い、新しい経験をし、五感で感じ、考え、そして行動すること。

それが、平和への一歩だと信じています。