タイのビザなし(ノービザ)入国とビザランについて

日本人がタイに行く場合、“観光ビザの免除措置”として、パスポートのみ(ビザなし)で最大30日間の滞在が許可されます。
30日以内であればタイ国内を自由に観光できますが、観光を目的として30日を超えて滞在する場合には観光ビザを、他の目的で滞在する場合には目的に応じたビザを取得しなければなりません。
また、ビザラン禁止の動きから、以前よりもビザなしで頻繁に入国することができなくなりましたので、タイへの渡航をお考えの方はご注意ください。
ここでは、タイにおけるビザなし入国やビザランの現状、延長手続きの方法などについて詳しくご説明します。
Contents
タイでのビザなし入国について
海外に行く際の必需品として「パスポート」と「ビザ」がありますが、パスポートは他国に“入国”するために必要となるもので、一方「ビザ」は他国で“滞在”するために必要となります。
しかし、滞在するために必ずビザが必要になるわけではなく、滞在可能期間を設けてビザを免除している国が多々あり、現在では日本を含め計49カ国がタイへのビザなし入国(短期的な観光を目的とした場合)が認められています。
タイにおける観光ビザ免除国 | ||
アイスランド | スイス | ブラジル |
アイルランド | スウェーデン | フランス |
アラブ首長国連邦 | スペイン | ブルネイ |
イスラエル | スロバキア | 米国 |
イタリア | スロベニア | ベトナム |
インドネシア | 大韓民国 | ペルー |
英国 | チェコ | ベルギー |
エストニア | デンマーク | ポーランド |
オーストラリア | ドイツ | ポルトガル |
オーストリア | トルコ | 香港 |
オマーン | 日本 | マレーシア |
オランダ | ニュージーランド | 南アフリカ |
カタール | ノルウェー | モナコ |
カナダ | バーレーン | リヒテンシュタイン |
ギリシャ | ハンガリー | ルクセンブルク |
クウェート | フィリピン | |
シンガポール | フィンランド共和国 |
なお、日本人がタイにビザなしで入国した際に許可される滞在期間は30日間なので、原則として30日を超えて滞在することはできません。
ビザなしでの入国回数
ビザなし入国における回数は、基本的に無制限ではあるものの、近年の入国規制の厳格化に伴って、陸路での入国回数が年2回に制限されました。
陸路とは、たとえばマレーシア⇒タイ、カンボジア⇒タイ、ラオス⇒タイ、というように近隣国からバスなどで入国することを指しますが、以前に「ビザラン(後述)」を多用する人が多かったために、その措置としてタイ政府は陸路での入国を年2回に制限したのです。
ただし、空路(飛行機での入国)においては制限がなく、一般的な範囲内(年1回など)であればビザなしで無制限に入国することができます。
しかし、空路でのビザなし入国においても、高頻度である場合や「ビザラン」の疑いがあると判断された場合には、入国拒否される可能性があり、実際には入国拒否されたという人もいるようなので、ビザなし入国に関しては注意を払うようにしてください。
また、陸路での入国が年2回に制限されているものの、年2回であれば必ず入国が許可されるわけではありませんので、ご注意ください。
片道の航空券での入国
ビザなしでタイに入国する場合、「往復の航空券がある」または「出国の航空券・バス券がある」ことが条件となっていますので、制度上においては片道の航空券での入国はできません。
しかし、実際のところ日本または他国のチェックイン時に提示を求められる一方で、タイでの入国時には提示を求められないことが多く、片道の航空券でも入国できるケースが多々あります。
ただし、近年の入国規制の厳格化に伴って、タイでの入国時に提示を求められることが増えているようで、片道の旅行券のみだと入国拒否となる可能性がありますので、片道の旅行券を購入するのは避け、往復の航空券を購入するようにしてください。
タイに滞在した後に他国へ行かれる方は、他国への航空券・バス券を必ず購入(予約)しておきましょう。
観光目的以外でのビザなし入国
一般的に、ビザなしでの入国目的は“短期的な観光”なので、それ以外を目的としてタイに滞在する場合は、目的に応じたビザを取得しなければいけません。
ビザなしでも30日の滞在が許可されていることから、短期的な留学(マッサージの資格取得)や出張(ビジネス)などでも、30日以内であればビザなしでも大丈夫ではないかとお考えの方がいらっしゃるかと思いますが、原則として30日以内でも留学目的であればEDビザ、ビジネス目的であればBビザを取得する必要があります。
もちろん、入国後の行動が監視されるわけではないので、入国後に目的を達するということも可能ではありますが、リスクがないとは言い切れませんので、短期的な観光以外の目的がある場合には、ビザなしで入国しないようにしてください。
タイのビザに関しては、「タイのビザの種類(観光・ビジネス・ロングステイなど)を徹底解説!」にまとめていますので、併せてお読みください。
ホテルなど宿泊先の予約
ビザなしで入国する際、ホテルなど宿泊先の予約確認書を提出する必要はありませんが、チェックイン時に宿泊先を尋ねられる場合があります。
また、入国時に必要となる入国カード(空路であれば機内で配布)に、宿泊先を記入する欄が設けられていますので、予約していなくても事前に宿泊予定先を必ず選んでおきましょう。
複数の宿泊先を予約している場合には、入国日に宿泊するところを口頭(チェックイン時)ならびに記入(入国カード/入国時)してください。
30日間の延長(計60日の滞在が可能)
ビザなしでの滞在可能期間は30日間となっていますが、タイ現地のイミグレーションオフィス(入国管理事務所)で延長手続きを行うことでプラス30日間の滞在が許可されます。
つまり、ビザなし入国で最大60日間の滞在が可能となるわけです。
ただし、30日の延長手続きが必ず受理されるわけではなくので、注意が必要です。
一般的な範囲内であれば問題なく受理されるのですが、以前に延長手続きを繰り返していた方やビザランを繰り返していた方は、延長拒否となる可能性がありますので、観光目的で30日を超えて滞在する場合には、観光ビザを取得するようにしましょう。
なお、観光ビザにおいても延長手続きを行うことでプラス30日間の滞在が許可されますので、シングルエントリーなら最大90日、マルチプルエントリーなら最大210日滞在することができます。
ビザランについて
前項で軽く触れましたが、「ビザラン」とはタイから他国に行き、再びにタイに入国する方法のことで、タイを出国して再入国するとビザなしの滞在期間が更新されます。(陸路なら15日、空路なら30日)
これを繰り返すことで、滞在期間が更新され続けるので、極端に言えば半永久的にタイに滞在することができるわけです。
しかし、以前はこの方法が多用できていたのですが、近年の入国規制に伴い、現在では陸路からの入国が年2回に制限されています。
これはビザ免除制度を利用して出入国を繰り返し、実質的に長期滞在を行う人を規制するために講じられた対策で、ビザランに焦点が当てられていますので、陸路での入国であっても“ビザランの疑いがない”場合には年2回の規制が適用されない可能性があります。
その一方で、たとえビザランを目的としていなくても、“ビザランの疑いがある”と判断された場合には、年2回の規制ならびに年2回に満たなくても入国拒否される可能性もあります。
ビザランに対する規制強化によって、陸路での入国が難しくなっていますので、ビザなしで陸路でのタイ入国を予定されている方はご注意ください。
入国拒否は各所・各人の裁量による
2016年12月31日から、陸路での入国制限が年2回までになったわけですが、実際のところ現在でも年2回以上、入国している方もいらっしゃいます。
この対策がまだタイ全土で浸透していないのか、はたまた公言しているものの各所・各人の裁量に任せているのか定かではありませんが、現状においては必ず年2回までと制限されているわけではありません。
入国拒否の判断は、国境にあるタイ側のイミグレーション、そして職員の裁量によるところが大きく、年2回を超えて入国できる可能性もありますが、以前よりも入国拒否となることが多くなっていますので、陸路を避けて空路で入国する手段も考慮しておくようにしましょう。
30日間の延長手続きについて
ビザなしであっても延長手続きを行うことで、1度のみ最大30日の追加滞在が可能となっています。
バンコクだけでなくプーケットやチェンマイ、パタヤなどでも延長手続きができますので、延長をご希望の方は最寄りのイミグレーションオフィスにて申請を行いましょう。
都市 | 住所 |
バンコク | Chaengwattana Road Laksi, Kosum Ruam Chai Soi 7, Don Mueang, Bangkok 10210 |
プーケット | Phuket Rd. A. Muang, Phuket 83000 |
チェンマイ | 192-193 Moo 2, Tumbon Tasala, Amphur Muang Chiang Mai, Chiang Mai 50000 |
パタヤ | 75/265 Pattaya, Bang Lamung District Chon Buri 20150 |
なお、延長手続きを行ったとしても必ず受理されるわけではありませんので、観光目的で30日以上の滞在を計画している方は、観光ビザを取得してください。
手続きに必要な書類
ビザなしでの延長手続きに必要となるのは、①パスポート、②パスポートのコピー(顔写真、入国スタンプ、ビザのページ)、③カラー写真1枚(4×6cm)、④申請書(TM7)、⑤出国カード、そして申請書に記入するための⑥黒色または青色のボールペン、⑦申請料1,900Bです。
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カラー写真は、一般的なパスポートサイズの3.5×4.5cmではなく、「4×6cm」なので間違わないよう注意してください。
また、出国カード(入国時に配布された青色の用紙)を提出する必要がありますので、忘れずに持参してください。
出国カードをなくしてしまった場合には、最寄りの警察署に行って紛失証明を発行してもらい、それをイミグレーションオフィスに持参して再発行してもらいましょう。
申請書(TM7)の書き方
延長手続きに必要となる申請書(TM7)は、各イミグレーションに置いてありますが、インターネット上でダウンロードすることも可能なので、イミグレーションに行く前に記入しておくと良いでしょう。(TM7のダウンロードはこちら)
TM7には記入項目が多く、また全て英語で記入しなければなりませんので、下表を参考に記入していってください。
英語 | 日本語 | 備考 |
Immigration office | イミグレーションオフィスの場所 | バンコクのイミグレーションオフィスなら「Bangkok」と記入 |
Mr.Mrs.Miss | 性別―既婚・未婚 | 男性(Mr.)
既婚女性(Mrs.) 未婚女性(Miss) |
Nationality | 国籍 | ◯ Japanese
✕ Japan |
Holding passport or traveling document No | 旅券番号 | パスポートの番号を記入 |
Issued at | 旅券の発行場所 | 例:Tokyo |
Vaild until | 旅券の有効期限 | パスポートの有効期限を記入 |
Kind of visa | ビザの種類 | 空欄でOK |
Arrived by (mode of transportation) | 入国時の交通手段 | 飛行機でタイに入国したなら「Airplane」と記入 |
Arrival/Departure card TM6 No. | TM6記載の番号 | タイ出入国カード(TM6)のバーコード下に書かれている番号を記入 |
I wish to apply for an extension of temporary stay in the Kingdom for another period of | 滞在延長希望期間 | 30日の延長のため「30」と記入 |
Reason for extension | 延長理由 | Tourismなど |
上表の記入項目はすべて表面のもので、TM7には裏面もありますが、裏面の記入項目にはAddress in Thailand(タイでの住所)、This application is written by(申請書を記入した人の名前)、Adress no./road/Tambon・Khwaeng/Amphoe・Khet/Changwat(番地、通り名、区、地区、県)など、簡単なものなので割愛します。
住所は申請時の宿泊先(ホテルなど)で問題ありませんので、事前に宿泊先の住所を調べておきましょう。
また、裏面の左下に写真の貼付枠がありますので、用意した4×6cmの写真を貼付の上、提出してください。(サイズが合わない場合は写真の外枠を切って貼付する)
手続きの流れ
延長手続きは非常に簡単で、混雑状況にもよりますが、たいていは1~3時間くらいで終わり、即日受領となります。
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手続きの流れは上記のように、まず必要書類を揃えて最寄りのイミグレーションに行き、「Queue Ticket」や「Query Ticket」などと書かれた受付カウンターがありますので、そこで整理券をもらいます。
そして、整理券にかかれている番号(手続きカウンターの番号も記載)が電光掲示板または口頭で呼ばれた後に、手続きカウンターに行き、申請料を含め必要書類を提出します。
必要書類を提出した後、名前(場合によっては国籍も)が呼ばれますので、「Passport Return」などと書かれている返却口(窓口)に行ってパスポートを受け取ると手続き終了となります。
ノービザから観光ビザへの切り替えについて
ビザなしで許可される30日間の滞在期間は、観光ビザを免除したものなので、ビザなしでタイに入国した後、タイ現地で観光ビザに切り替えることは基本できません。
しかし、タイから出国した後、他国のタイ大使館でタイの観光ビザを申請・取得することは可能で、こうすることでビザなし入国+延長で60日、観光ビザ60日(シングルエントリー)で計120日間、タイに滞在することができます。
タイの観光ビザは日本だけでなく、ほとんどの国で申請することができますが、申請する国として便利なのが近隣国であるラオス(ヴィエンチャン)、カンボジア(プノンペン)、マレーシア(クアラルンプール)の3ヶ国・3都市です。
これらの国はタイと国境を面しているので、タイへの再入国が簡単で、飛行機を利用することなく陸路での入国が可能となっています。
なお、カンボジアにおいては入国に際して観光ビザ(アライバルビザ)を取得する必要がありますが、国境の入国カウンターで必要書類(パスポート、写真1枚[3.5×4.5cm]、申請書、申請料30USD)を提出するだけで簡単に取得できます。(30日の滞在)
ラオスではビザなしで15日、マレーシアではビザなしで90日の滞在が許可されていますので、お金と手間をかけたくないという方は、ラオスかマレーシアでタイの観光ビザを申請すると良いでしょう。
近隣国での観光ビザの申請手続き
ラオス(ヴィエンチャン)、カンボジア(プノンペン)、マレーシア(クアラルンプール)でのタイの観光ビザの申請場所は、それぞれの国のタイ大使館となります。
ラオス
(ヴィエンチャン) |
Avenue Kaysone Phomvihane Saysettha District, Vientiane |
カンボジア
(プノンペン) |
No.196 Preah Norodom Boulevard, Sangkat Tonle Bassac, Khan Chamkarmon, Phnom Penh |
マレーシア
(クアラルンプール) |
206 Jalan Ampang, 50450 Kuala Lumpur |
申請に必要となる書類は、各国で異なりますので、下表に記載の書類を揃えて大使館にて申請を行ってください。
ラオス |
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カンボジア |
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マレーシア |
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カンボジアとマレーシアでは、航空券やバス券などタイ出入国を証明する書類が必要となりますが、提示を求められないケースも多々ありますし、口頭で問題ない場合もありますので、心配しなくても大丈夫かと思います。
また、カンボジアでは銀行残高証明書が必要になりますが、同様に提示を求められない場合もあります。
結局のところ、提出の必要がある書類は大使館職員の判断によるところが大きく、必要書類が揃っていなくても受理されるケースが多いので、基本的には日本よりも簡単に取得することができます。
申請書のフォームはいずれも同様で、各国の大使館に置いてあるほか、インターネット上でダウンロードすることも可能なので、ダウンロードして事前に記入しておくのも良いでしょう。(ダウンロード先⇒ラオス、カンボジア、マレーシア)
申請書の書き方は、基本的に日本でタイの観光ビザを取得する時と同様ですので、特に苦労することなく記入できるかと思います。
なお、申請書の書き方に関しては、「タイの観光ビザの必要書類と申請・延長方法について」で詳しく説明しています。
タイのビザなしに関するまとめ
ビザラン禁止の動きによって、ビザなしでの入国が以前よりも困難となっていますので、タイへの渡航をお考えの方はご注意ください。
また、ビザなしで30日の滞在、さらに延長手続きを行うことで最大60日間の滞在が許可されますが、必ず受理されるわけではありません。
ビザなし入国が許可されているのは、日本が観光ビザの免除国であるためで、観光目的以外であれば目的に応じたビザを申請・取得する必要がありますので、30日以内の短期間であっても出張や留学など、何かしらの目的があるという方は、目的に応じたビザを申請するようにしましょう。
タイのビザ申請については、「タイのビザ申請・延長(更新)方法をわかりやすく完全解説!」にまとめていますので、ぜひご一読ください。